2023年2月14日火曜日

Euphoria - Lily King/ ユーフォリア - リリー・キング

 ニューギニア関連の本を探していた時にこの本が検索結果に出てきた。以前からAmazonのおすすめ本リストにこの本がよく出てくることに気付いていたが、内容を知らずにいつもスルーしていた。後に本書がアメリカの有名な人類学者であったマーガレット・ミードをモデルにしたフィクションであることを知り、納得した。

マーガレット・ミードは1920年代から1930年代にサモアやニューギニアで人類学のフィールドワークを行い、サモアでの研究をまとめた著作「サモアの思春期(Coming of Age in Samoa)」が話題となり、一躍有名になる。この小説はその後、二人目の夫とニューギニアの奥地でフィールドワークを始めた主人公Nell(ミードがモデル)と、すでにニューギニアでフィールドワークを行っていたイギリス人の人類学者Banksonが現地での研究を通して互いに惹かれ合っていく過程を描いていく。フィクションという形で登場人物の名前や地名などは変えてあるものの、実在した人物や地名がモデルとなっており、マーガレット・ミードが実際に研究した部族の女性優位性や、白人のための強制労働に連行された地元の青年のことなどが横糸になっている。夫で自らも人類学者であるFenは学者として成功している妻のNellに嫉妬感をいだいていて、成功するためには手段を選ばない。ずっと孤独にフィールドワークを続けてきたBanksonは人恋しさで自殺を試みることさえあった。そこにNell とFenがやってきて、BanksonはNellの研究に対する熱心さに感心すると共に次第に惹かれていく。結末はフィクションらしく事実とは異なったものになっている。

ニューギニアを舞台にした人類学者の小説というと、Hanya YanagiharaのPeople in the Trees(邦題:森の人々)を思い出す。これも実在した人類学者をモデルにした話で、不思議な雰囲気の小説だった。Euphoriaでも南国の妖艶な雰囲気が醸し出され、それが3人の関係を後押ししているように思う。著者が参考にしたというマーガレット・ミードの伝記も読んでみたい。


 

 

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